P丸大豆醤油には、酸化褐変という大きな問題がある。

 自然食品愛好家の中には、自然塩に含まれる苦汁分の害と同じように、丸大豆醤油の酸化褐変問題を知る人は非常に少ないようです。 醤油を造る専門家の間では、昔から丸大豆醤油が持っている最大の欠点である<酸化褐変の問題>は、いずれ解決しなければならない問題であると言われていたのですが、この問題が解決できない為に、外部にはほとんど知らされる事がありませんでした。

 酸化褐変とは字の如く、
大豆に含まれている大豆油が酸化現象を起こす事により酸化脂質に変化して、褐色になる事とを言います。 醤油という文字は、しょう油(という文字)と書くように、昔ながらに、丸大豆で作られた醤油の場合には、丸大豆に含まれる大豆油が酸化現象を起こし、非常に多くの酸化脂質を含む醤油ができてしまうのです。

 昔から、お酒を造る時には、玄米を原料として使いません。 何故なのでしょうか? 一物全体が良いというのであれば、玄米を原料にしても良い筈です。 ところが高級なお酒ほど、精米度の高いお米を原料にしますので、お米を半分以上削り取ってしまい、お米の量が1/3ほどの量になってしまうのです。 何故、そんな勿体ないことをするのでしょうか?
 その理由は、
お米の胚芽の部分に含まれている、胚芽油を完全に除去する為なのです。 油は、どのような油でも必ず酸化してしまいます。 完全に胚芽油を除去することによって、油を含まないお酒が出来上がります。 油を含んでいないお米で造られたお酒は、酸化現象を起こしませんので、何年経っても酸化脂質が発生せず、変質をしない素晴らしいお酒が出来上がるのです。 
 数年前までは、加熱殺菌をした加熱殺菌ビールが主流でしたが、現在では、生ビールが主流になってしまいました。 
何故でしょうか? 通常、ビールには加熱殺菌が施されるのですが、加熱殺菌を施すことにより、どうしてもカルバミ酸エチルなどの有害物質が発生してしまいます。 以前に、カナダに輸出した某社のビールが、カナダの厳しい基準をクリアーすることができず、全て返品になったことがありますが、それ以降、徐々にビールは加熱殺菌を施さない生のビールに切り替わっていったのです。 (ただし、味覚は人それぞれ違いますので、味の面だけで判断すると加熱殺菌した方が美味しいと感じる人もいるようです。 それは、浄水器を取り付けていなかった喫茶店が、浄水器を取り付けた後のお客の反応が、美味しくなったという反応と、不味くなったという反応の2つに分かれるようなものです。)


 
醤油の場合にも、加熱殺菌を施すことによって有害物質が発生しますので、加熱殺菌を施さない生の醤油を選ぶ必要があります。 私が、全国を飛び回っていた時に出会った醤油こそが、特殊な酵母菌を使用して低温発酵醸造法により作られた極上の無添加・生造り“風味生醤油”なのです。 一般的には、生醤油として販売されている醤油も実は、低温殺菌が施されています。 私が知る限りでは、日本で唯一存在する本物の生造り醤油であると思います。 
 分析したところ、等級は上級品でありますが全窒素分の数値を見ると特級品以上の1.79%と最高の値を示しておりました。(醤油の専門家であるならば、この全窒素成分の数値に驚かれると思いますが、本当に美味しいのです。)


  低温発酵・生造り“風味生醤油”の特徴…

     @ 一切の加熱殺菌を施していない、完全な生醤油です。 (低温殺菌もしていません。)
   A 生の醤油ですので、酵素・酵母菌・乳酸菌が活きています。
   B 瓶詰め後にも熟成が続いていますので、開封後も常温で数年間の保存が可能です。
   C 酸化褐変の問題をほぼ解決しています。
   D アレルギー体質の人も安心して食べられる醤油です。
   E 他に類例を見ないアミノ酸形態を持っており、他と比較できないほどの美味しさです。
   F アスパラギン酸・グルタミン酸などが、通常の醤油に比べて3倍近くも含有されています。
   G 特に、グリシンの含有率は世界一であり、常温でも腐敗し難い醤油です。
   H 優れた活性酸素消去力を持つSOD食品です。
   I 同じ塩分の醤油に比べて少し鹹く感じるのは、加熱殺菌をしていない生醤油の特徴です。(塩分15%)

<生造り風味醤油物語>


 在りし日の今井奥太郎さん H6(1994.5.21)
 風味生醤油の研究開発者は、新潟市に住んでおられた今井奥太郎さんです。 住んでおられたと書くのが非常に辛いのですが、昨年の平成14年3月21日に突然亡くなられたのです。 平成13年に私が、奥太郎さんの醸造所を訪れた時、ちょうど温泉に保養に行かれていた為にお会いできなくて残念だったのですが、真面目一本の性格でしたので無理をされたのだろうと思いました。
 現在は、息子さんが後を引き継いで今まで通りの美味しい生醤油を造っておられますので安心なのですが、奥太郎さんにはまだまだ元気で研究開発をして頂きたいと思っておりましたので、思い出す度に残念さが込み上げてきます。 今までに何度となく、奥太郎さんにお会いしながらお聞きした話を書いておきたいと思います。

(こうやって書きながら、奥太郎さんの「いや〜ぁ、岡田さん、これがまた旨いんだわ〜。」と何とも言われぬ良い顔をして熱弁されている姿が目に浮かび、涙が溢れてきます。)

研究のきっかけ…

 昭和55年に、元気だった妻が動脈瘤が原因で突然倒れました。 生死の境をさ迷ったものの、ようやく一命だけは取り留めました。 現在、回復はしましたが、右半身は不随のままです。
 この時、新潟市民病院の担当医(現在、同病院の緊急センター長)の本多先生から、
血管がもろくなりきれる病気や各種の癌が、日常食べている食品中の添加物の相乗作用による影響もあるように思われると教えてもらいました。 当時の私は、合成保存料・着色料・アミノ酸類を添加した一般的な醤油を造っていましたが、これを聞いて食品製造業者としての責任に目覚めさせられました。 そして、この時から無添加の本醸造醤油の研究と製造に取り組み始めました。

本醸造醤油の研究へ…

 単に添加物を入れないものをと始めてみましたが、イザ作ってみると色が黒く変化して、とても不味くて食べられないような醤油となってしまいました。 
酸化褐変の大きな壁にぶつかってしまったのです。

 この大問題の解決の為、私財を投げ打って延々7年余りも研究に没頭しました。 ところが、どうやってみても納得のいく醤油ができませんでした。 最後には、とても自分の力など及ばぬところと、一旦は投げ出してしまいました。 
 ところが、全てを捨ててみて、自然界のバランス・調和から大きなヒントを得ることができたのです。 生物の住み分けです。 高温の温泉の中にも、極寒の海中にも、それぞれ特殊な菌どもが活動しているという現実があります。

 醤油造りも、今までの菌ではない発酵菌に変えてみたらどうかと気付いたのです。 通常、味噌・醤油を造る時に使用する菌が働く温度は25℃くらいです。 その為、普通なら菌による大豆・小麦の成分を分解するのに2年(2夏)もかかってしまいます。 この間に、有害な菌も活動しますし、モロミの中なお脂質の酸化も進んでしまいます。

 これに対して、通常よりも低い温度で活発に発酵し、短期間で分解を終えることのできる別種の発酵菌を使用することで、ついにこの問題を解決しました。 この菌は、15〜17℃の間で最も活発に活動します。 本来、菌にとって非常に厳しい環境でありますので、とても考えられないことです。 これは、今までの醤油つくりの方法から考えると、かなり異なった点があるかと思います。 結果として、有害な雑菌による汚染限度のきわめて低い製品となりました。

 この風味生醤油は、色が黒く変化する酸化褐変という大問題の解決に、かなり近づいたように思われます。 又、予期しなかったことでしたが、副産物として、味の良いソフトな醤油が出来上がったのです。 塩分濃度・エキス分等の分析値は、同じ自社の旧製品と比べてみても、味・香りでかなりの差が感じられます。 また、常温で数年間の保存に耐えられますし、開栓後も冷蔵庫に入れる必要がありません。 料理にお使い頂いた時、素材の持ち味を引き立て、とてもよい香りがします。 日本古来の醤油の香りがするようにも思われます。


生造り醤油の商品化について…


 醤油は、一般的に瓶詰めをする前に加熱殺菌処理をします。 雑菌を殺して、安定した製品にするためです。 この時、乳酸菌等の貴重な菌も同時に殺してしまいます。 モロミから絞ったままの醤油を<生揚げ醤油>と言いますが、これの商品化には、一般にはまだ間があるように思われます。

 このたび私は、前述の新しい酵母菌の使用によって、この生揚げ醤油を商品化することができました。 生造り風味醤油と名付けました。 生ですので、酵素・酵母菌・乳酸菌が活きていて、瓶の中でもさらに熟成が続いています。  その為、開栓後でも常温保存ができます。

 ビール・日本酒が生に移行しつつある現実にご注目下さい。 麹菌で作る食品は、生であることが望ましく思われます。味・香りの持続性がある点でも、生の方がより優れています。 また、たとえ加工食品といえども、できる限り自然に近い方が良い食品ではないでしょうか。 何故ならば、生命のある食物こそ、私たちの身体が必要としているからです。

平成3年9月
                               
                                                 
風味醤油醸造元 
                                           今井 奥太郎

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